社会保険算定基礎届

 本年度も社会保険の算定基礎届が近づいてまいりました。社会保険料の申告事務ですが、対象者は7月1日在籍の被保険者です。ただし、6月11日以降の取得者は対象となりません。
 同様に、4、5、6月に昇降給した方は、算定基礎届ではなく月額変更を提出することとなります。社会保険の適用事業所の皆様は4~6月に支払った給与をお知らせ戴きますよう宜しくお願い致します。

残業80時間超の方への通知

 安全衛生法の定めにより、長時間労働の労働者より申出があった場合には医師による面接指導を受けさせることとされておりましたが、この長時間労働がこれまでは月100時間とされておりましたが、法改正により4月からは月80時間となりました。これにともない、時間外・休日労働が「月80時間」を超えた労働者に対し、会社は通知する義務があります。これまでは本人の申出があった場合に対応すればよかったのですが、会社側から通知することとなりました。裁量労働制の労働者や管理監督者も対象となりますので、労働時間の把握が必要です。会社の規模に関わりなく適用されますのでご留意下さい。

非正規にも退職金支給

 2月20日東京高裁では地下鉄の駅売店で働く契約社員ら4人に、同様の業務をしている正社員と賃金格差があるとして、退職金等220万円の支払いを命じる判決を下しました。控訴審です。
 この訴えは、労働契約法20条が禁じる「不合理な格差」にあたる所謂「同一労働同一賃金」に反しているとして、差額の支払いを求めたものです。
 退職金に関しては、原告の内2人は10年ほど勤務しており、「長年の勤務に対する功労報償の性格有する退職金すら一切支給しないことは不合理」として正社員の25%は少なくとも支給すべし、とされました。契約社員への退職金支給を認めた初めての判決ということです。
 「働き方改革関連法」により、来年(令和2年)4月(中小企業は令和3年4月)より「同一労働同一賃金」に関する法律が改正されます。これにより不合理な格差が明確化され行政による紛争解決も整備されることでしょう。近年は賃金格差を争う裁判も増加傾向です。ご留意下さい。

健康保険被扶養者国内居住者に

 健康保険法等の一部を改正する法律案が2月15日国会に提出されました。その中で「被扶養者等の要件の見直し」が注目されています。
 現在の制度には被扶養者に関して国内居住者に限定する要件がないため、海外で暮らす被扶養者も健康保険を利用できます。これが不正利用されている、との指摘がされているためですこれは改正入国管理法の中でも議論された問題です。改正案では、被扶養者の要件に「日本に住所を有する者であること」が追加されています。勿論日本に住所を有しない者であっても生活基盤が日本に有ると認められる者には例外的に要件を満たすものとされます。
 この例外については省令で定められる予定ですが、留学生や海外赴任に同行する家族等が該当することとになると思いますが、所謂「医療滞在ビザ」等で来日して国内に居住する人は除外することとしています。
 この改正案には医療機関が健康保険被保険者証の代わりにマイナンバーカードを利用してオンラインで資格確認をできるようにすること等も盛り込まれています。
 マイナンバーカードの普及を促す目的もあるのではないでしょうか。

一括有期事業事務簡素化

  厚生労働大臣は、労働政策審議会に対して「労働保険の徴収等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱」について諮問し、同審議会部会において妥当との答申を受けました。
ポイントは以下の二点です。
1.一括有期事業に係る地域要件を廃止する。
 これは、これまで有期事業を一括することのできる地域が、隣接する都道府県等に限られていたものを遠隔地の事業も一括できることとしたものです。
2.一括有期事業を開始したときに事業主が労働基準監督署に提出する一括有期事業開始届を廃止する。
※一括有期事業:同一事業主が行う2以上の有期事業であって、一定の要件を満たすものを法律上1の事業とみなす制度。
 以上のように変更されましたが、開始届につきましては、従前どおり当事務所にご連絡戴けますと幸いです。

編集後記

 米中貿易摩擦も泥沼の様相です。G20でなんらかの進展があるのでしょうか。上場企業も3年ぶりの減益とのこと、景気は先行き不透明です。日産の決算も営業利益率が2.7%(トヨタは8.2%)と2ポイントの悪化。ゴーン元CEOの拡大路線の負の遺産と言われております。4800人の削減予定、これにより年300億円のコスト低減だそうですが、厳しい決断です。一方銀座の高級クラブのママが2億8600万円もの所得を隠し、6700万円の脱税、とのニュースもあります。こちらは景気の良い話です。ビットコインも90万まで静かに戻しています。こちらも新しい展開があるのでしょうか。変化の激しい時代ですが、こういうときこそ「一生をかけて石を穿つ」覚悟で生きることがむしろリラックスできるのではないでしょうか。「水滴に石も穿がたる。道を得る者は一重に天機に任す。」一つ一つの仕事を地道に積み重ねて行きましょう。