雇用調整助成金臨時特例成立

 新型コロナウイルス感染症等の影響に対応する雇用保険法の臨時特例等に関する法律が成立しました。主な改正事項は以下のとおりです。
1.助成金の1日あたりの上限額の引き上げ
  8,330円→15000円
2.解雇せずに雇用維持に努めた中小企業助成率の拡充
 9/10→10/10
  なお、1及び2の引き上げ拡充につきましては遡及適用につきましては、令和2年4月1日に遡り適用されることとなりました。
3.緊急対応期間の延長
 緊急対応期間は3カ月延長し、9月30日まで
4.出向の特例措置
  雇用調整助成金対象の出向期間が「3カ月以上1年以内」の緊急対応期間については「1カ月以上1年以内」に緩和。因みに雇用調整助成金の申請及び支給実績ですが、6月12日時点では以下のようになっております。
 累計支給申請件数:164,679件
 累計支給決定件数: 92,616件

算定基礎届について

 「算定基礎届」は、毎年9月1日から翌年8月31日までの保険料を決定する重要な届出です。4月~6月に支払った賃金が必要となりますので、ご用意を宜しくお願い致します。
 また、本年も「健康保険・厚生年金被保険者等の資格及び報酬等の調査」のご案内が届いている事業所が散見されます。その際にはご連絡下さい。
 この調査は被保険者の加入漏れ等適正手続を調査するもので、2年~4年に一度実施されるものです。今年度は地域の公共施設等を利用している年金事務所が多いようですが、必要書類を郵送で求めるところもあるようです。

公的年金制度等改正

 2020年5月29日の参議院本会議で法案が可決、成立致しました。「人生100年時代」や「老後2000万円問題」等将来の老後に対する不安が取りざたされている昨今ですが、今回の改正がどの様な影響を及ぼすのか、考えてみたいと思います。
 制度改正において検証されたのは、100年間を想定した人生の財政均衡状況です。これには所得代替率(年金受給開始時期に現役世帯の手取り収入と比較)を50%に維持できるか、が重要となります。このためには①今後の経済成長や労働参加が高水準であること、②「被用者保険の適用拡大」「保険料の拠出期間の延長」「受給開始時期の繰り下げ選択の拡大」等が必要である、という事です。
 これらを踏まえて今回の改正のポイントは以下の三つとなります。
1.在職老齢年金の見直し
 60歳以降収入があり、厚生年金に加入しながら受け取る老齢厚生年金は現在、加給年金を除く特別支給の老齢年金の月額とその月の標準報酬月額との合計が65歳未満の場合は28万円、65歳以上の場合は47万円を超える場合超えた金額の半分が年金からカットされることとなっていますが、今回65歳未満の方も47万円に揃えられます。これにより60歳前半の方の収入が増加することとなります。
2.短時間労働者への適用拡大
 これまで適用対象外であった短時間労働者(週30時間未満)の労働者に適用されるようになります。これにより短時間労働者であった方の老後の年金額が増え(基礎年金+厚生年金)、また病気等による就労不能時に傷病手当が受給できることとなります。
 勿論、適用対象者が増えることにより、企業の負担も増加する、という側面もあります。
3.繰り下げ受給可能年齢の選択肢の拡充
 現行では支給開始年齢は65歳とされ、受給時期は60歳~70歳のなかで選択することができるようになっていますが、これを75歳まで拡充し、柔軟度を上げたものです。
 公的年金制度の改正と併せ、私的年金である確定拠出年金も加入要件が拡大されます。現行の実施可能企業を「従業員100人以下」→「300人以下」に、脱退一時金の通算期間「3年以下」→「5年以下」、受給開始年齢化「70歳」→「75歳」、加入要件「65歳未満」→「70歳未満」等順次改正される予定です。
 また、個人型確定拠出年金であるiDeCoも加入年齢が引き上げられます。税制上のメリットが5年延長は良いのではないでしょうか。

編集後記

 新型コロナウイルス感染症については、東京都はアラートを解除し12日ステップ3に進めました。しかしその後新規感染者が2日連続で40人台を記録するなど予断をゆるさない状況が相変わらず続いています。経済をこれ以上疲弊させないためには、コロナとの共生を如何に図るか、にかかっていると言えそうです。「偶然は準備のない者に微笑まない」と言われます。この苦境下で準備を怠らない者だけがコロナ明けの回復を享受できる、と信じて頑張りましょう。