建設業法改正
今回は、注文者と建設業者双方に影響のある改正がなされています。主旨は建設現場を働きやすくし、生産性を向上させるためとされています。ポイントは以下のとおりです。
1.注文者に対し、著しく短い工期による請負契約を禁止する。
「著しく短い工期」とは、工事の内容や従事する作業員数、資材の種類等により変わるもので、これらを勘案することとなります。休日や雨天の不稼働日等を考慮し、過去の実績も考慮したものとなります。違反した場合は認可行政庁から勧告、勧告に従わない場合は企業名の公表となります。
2.注文者に対し、工期に影響する情報の事前提供義務を課す。
3.建設業者に、工程の細目を明示した見積もりを行う努力義務を課す。
4.元請事業者に、下請金額の内「労務費相当額」を現金払いとする義務を課す。勿論銀行振込も可能です。
5.請負契約書の記載事項に「工期を施工しない日・時間帯」を追加する。
6.現場の技術者(監理技術者・下請主任技術者)のルールを合理化する。
従前監理技術者は1現場に1人配置でしたが、一定の要件を満たす補佐する者を置いた場合には複数現場を兼務できることとなりました。また、下請業者も現場に主任技術者を置く義務がありましたが、再下請け業者さえも配置する必要はないのでは、とのことで、新法では「特定専門工事」については一時下請けの主任技術者が再下請負業者と施工管理に関し合意すれば、置く必要がなくなりました。
因みに、「特定専門工事」とは、下請負代金3500万円未満の鉄筋工事、型枠工事となります。
7.認可行政庁が資材製造業者に改善勧告・命令ができるようになる。これまでは、資材の欠陥による場合でも、建設業者への指示・勧告だけでしたが、今後は製造業者に対しても改善勧告・命令ができるようになります。
8.経営業務の管理責任者に関する「5年以上の経験」を削除し合理化する。「事業者全体として適切な経営管理体制となっていること」とされました。
9.合併・事業継承に際しての事前認可制度を新設し、事業継承を円滑化する。
10.下請業者が元請業者の違法行為を密告した場合の不利益取り扱いを禁止する。
11.現場における下請業者の許可証掲示義務を緩和する。
今回は、建設業のみならず入契法も改正されています。施行日は改正点により異なっておりますので、ご注意下さい。
労災保険給付の改正
令和2年9月1日より複数事業労働者への労災給付が改正されます。これまで複数の会社で勤務する労働者が、業務や通勤中怪我や病気になった場合に、すべての会社の賃金額を基に給付されていない(これまでは当該負傷の原因となった会社のみの賃金額で算定)ことは大きな問題でしたが、多様な働き方が広く普及している現在、このような方々が安心して働ける環境を整備する、という観点から労働者災害補償保険法が改正する運びとなりました。
複数事業労働者の方やその遺族の方への給付は、全ての事業所の賃金額の合計を基礎として保険給付額を決定することとなります。
これには特別加入の方も対象となりますし、1つの事業場では労災認定されない場合でも複数の事業場での負荷が原因(過重労働等)と評価されれば、労災認定され、保険給付が受けられる可能性があります。
これは9月1日以降に発生した怪我や病気が対象です。もし該当する被災者が発生した場合にはご相談下さい。
最低賃金改定
令和2年8月21日付けで全国すべての地域別最低賃金の改定額が答申されました。全国の加重平均は902円となり、昨年より1円引き上げられたことになります。北海道、東京、静岡、京都、大阪、広島、山口を除く全ての県で引き上げられます。
因みに神奈川県は、10月1日より1円引き引き上げられ、時給1,012円になります。万一給与時給額に最低賃金を設定している場合には昇給が必要となります。ご留意下さい。
編集後記
いよいよ菅内閣の誕生です。安倍内閣を継承するとのことですが、東京商工リサーチの調べによると9月はコロナ破綻が再燃してきているようで、負債額1000万円以上の企業は6件、2月からの累積では484件と深刻です。飲食、アパレル、宿泊を筆頭に、経済基盤の弱い中小、零細企業は、国が支え続けなければならないでしょう。11月には米大統領選も迫ってきました。新しい時代の幕開けが、コロナ騒動を払拭するものであってもらいたい。「我心を本として、人にも問わず、気任せにすべからず」トップに立つ人間は自分の考えだけに頼らず、多くの専門家の意見を参考に、数多の難題に真摯に立ち向かってほしいものです。