本年の法改正予定

 2022年1月は、雇用の管理の上で重要な法改正が多くありました。

◎雇用保険マルチジョブホルダー制度開始
 マルチジョブホルダー制度とは、「複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、そのうち2つの事業所での勤務を合計して以下の要件を満たす場合に、本人からハローワークに申出を行うことで、申出を行った日から特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度」であり、要件は下記の通りです。
・複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
・2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること
・2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること
手続は労働者本人が行う必要がありますが、労働者から依頼があった場合、事業主は雇用の事実や所定労働時間などの証明を速やかにする必要があります。また資格喪失の理由が労働者本人の死亡等である場合は事業主が届出をする必要が生じます。

◎電子帳簿保存法の改正
 国税関係帳簿や、国税関係書類(国税に関係するもので、貸借対照表などの決算関係書類、その他注文書や請求書など)といった、保存義務(7年)のある書類が対象となる法律です。  
今回の法改正により、電子帳簿保存制度の導入・利用やスキャナ読み取りによる電子データの作成が簡単になるほか、申告漏れ等の不正に対する罰則が強化されることになりました。

◎傷病手当金の支給期間の通算化
 傷病手当は、業務外の理由によって病気やケガを負い(労災ではなく)働けなくなった労働者が対象です。3日間を超えて仕事を休み、その間の給与が支給されない場合に支給されます。
 従来、傷病手当金は同一のケガや病気に関して、支給開始日から起算して1年6か月の間が支給期間であるとされてきました。これは療養中に出勤して傷病手当が不支給となる期間も含めての1年6か月であり、入退院を繰り返すなどの治療法にはあまり相性がよくありませんでした。
 今回の改正により、傷病手当は支給開始日から通算して1年6か月との支給となります。事業主は、療養中の従業員の勤怠を正確に把握する必要が生じますが、従業員が離職せず、働きながら治療を受けるスタイルにおいてより使いやすいものとなりました。

 また4月以降も、民法改正に伴う成年年齢の変更、育児・介護休業法改正、女性活躍推進法改正、年金制度改正法といった制度の変更が多く予定されています。就業規則の見直しなどが必要となる場合もあるかと思います。お気軽にご相談ください。

参考:厚生労働省ホームページ<https://www.mhlw.go.jp/
index.html>2021年1月17日取得. 杉本崇「2022年から変わること 中小企業も注意したい社会保険制度や法律の改正」,朝日新聞社「ツギノジダイ」,2021年11月21日,<https://
smbiz.asahi.com/article/14481653>2022年1月17日取得.

雇用調整助成金特例措置延長

 厚労省は10月19日、雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の特例措置を2022年3月まで延長することを公表しました。
 今回の延長においては、1日当たりの助成金の段階的な引き下げが行われます。
 雇用調整助成金の中小企業における助成内容について、令和4年の1・2月は原則1日あたり80%(解雇等がない場合は90%)で計算し、1人当たりの上限は11,000円です。3月は上限が9,000円になります。
 地域特例(緊急事態措置やまん延防止措置で知事の要請に伴って営業時間の短縮に協力した事業主)や業況特例(直近3か月の平均売上げがコロナ以前から3割以上減少している場合)にあてはまる場合は、1月から3月まで80%(解雇等がなければ100%)を、上限15,000円で算出します。
 直近の申請期限につきましては、昨年10月~11月分については2月28日、昨年12月分については3月31日となっています。

編集後記

 旧年中は大変お世話になりました。本年も変わらぬご厚情のほど、宜しくお願い申し上げます。
 ようやく収まるかと淡い期待を寄せていたコロナも、オミクロン株が驚異的な増加を示しています。一方では、8000キロメートルも離れたトンガ沖の噴火による空振という聞きなれない現象により津波が起きました。今、地球は全くこれまでの経験則が活用できない事態に立ち至っているようです。専門家でも説明しきれないような事態がまだまだあったということに驚きます。
 これからも、自らの知恵と英知を総動員して、目の前の難問を解決して行くしかないようです。「川に落ちれば、泳ぎのうまい下手は関係ない。岸に上がるか溺れるか、ふたつにひとつだ」(サマセット・モーム)岸に上がりましょう!