本年の法改正予定

2022年4月には、雇用の管理の上で重要な法改正が多く予定されています。就業規則等の見直しが必要になりましたら、ご相談ください。

・育児・介護休業法改正

 前年6月の法改正から、育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付けと、有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和が4月より施行されます。
また、その後も順次、男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設や育児休業の分割取得に関する制度、有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和が施行される予定です。

・女性活躍推進法改正

一般事業主行動計画の策定・届出義務及び自社の女性活躍に関する情報公表の義務の対象が、常時雇用する労働者が301人以上から101人以上の事業主に拡大されます。また令和2年6月からすでに施行されている制度としては、常時雇用する労働者が301人以上の事業主には、女性活躍に関する情報公表の強化の必要が生じているのに加え、女性の活躍推進に関する状況等が優良な事業主の方への認定(えるぼし認定)よりも水準の高い「プラチナえるぼし」認定が創設されています。

・個人情報保護法改正

 本年4月より、改正個人情報保護法が全面施行されます。
個人情報の利用停止・消去等の個人の請求権の拡充、事業主の個人情報責務の拡大、事業者による自主的な取り組みを促すための仕組みづくり、データ利活用に関する施策のあり方、違反に対するペナルティの強化、グローバル化にともなう外国事業者の対象化や法の域外適用などが改正のポイントとなっています。
・パワハラ防止法の中小企業への適用
「パワーハラスメント防止措置」が中小企業の事業主にも義務化されます。具体的には、就業規則等によってパワハラの禁止や対処方針を規定すること、相談窓口の周知や相談に対する適切な対応、相談者のプライバシー保護の取り組みや相談を理由とする不利な取扱いをしない旨の周知、啓発などです。

・年金制度改正法

多様な働き方に対応するため、①被用者保険の適用を段階的に拡大、②在職中の年金受給の在り方の見直し、③受給開始時期を60歳から75歳の間への拡大、また、④確定拠出年金の加入可能要件の見直し等が予定されています。
①被用者保険の適用の段階的な拡大は、短時間労働者を被用者保険の適用対象とすべき事業所の規模を、現行の「500人超」から段階的に引き下げる等の形で行われます。具体的には、まず2022年10月に100人超規模の企業までは適用予定です。また、短時間労働者の勤務期間要件についても、現行の1年以上を撤廃し、フルタイム労働者と同じ2か月超の要件が適用されるようになります。
②在職中の年金受給の在り方の見直しとしては、10月分より、65歳以上の者は在職中であっても年金額の改定が1年に一度、定時に行われるようになります。また、60歳から64歳に支給される在職老齢年金については、支給停止の基準額が、賃金と年金の合計額28万円から47万円に引き上げられます。
③公的年金の繰り下げ受給の上限年齢が現行の70歳から引き上げられ、65歳から75歳までの間に拡大されるため、受給開始時期の選択肢が広がります。
④企業型確定拠出年金(企業型DC)が、厚生年金被保険者(70歳未満)であれば加入できるようになります。また、個人型確定拠出年金(iDeCo)についても、60歳未満の要件を撤廃し、国民年金被保険者であれば加入可能とされます。これらの確定拠出年金は、受け取り開始時期等も、上限が上げられ選択肢が拡大します。
参考:厚生労働省「育児・介護休業法について」<https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html>2021年3月17日取得.厚生労働省「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました」<https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00006.html>2021年3月17日取得. 杉本崇「2022年から変わること 中小企業も注意したい社会保険制度や法律の改正」,朝日新聞社「ツギノジダイ」,2021年11月21日,<https://smbiz.asahi.com/article/14481653>2022年1月17日取得.

編集後記

やっとまん延防止が解除されます。岸田総理も日常生活を取り戻す、と言っています。勿論安心安全に気を配りながらではありますが。
そのような最中、国内では春闘の賃上げ交渉で満額妥結が相次いでいます。政府の賃上げ要請に経済界が応える形ですが、小麦等の輸入食材や原油等の値上がりが物価を押し上げ、国民の実質的な生活はむしろ苦境に立たされてゆくようです。
一方ウクライナへのロシア侵攻は国際社会の経済制裁により、ロシアのデフォルトが現実見を帯びてまいりました。プーチンも、想定外のウクライナの抵抗と国内経済の悪化に焦燥感を募らせているように思えます。停戦の方向に舵を切ってくれるといいのですが。戦争に「良い戦争」はありません。