「災害」への備えを見直しましょう

今年も猛暑が続いています。気象庁によると、日本において「先月の月平均気温は、1898年以降で7月として最も高かった」とのことです。ニュース番組などでは、この暑さは「災害級」と表されることも多く、このお便りを書いている今日も、熱中症警戒アラートが発令されており、町を歩くだけでも危険を感じます。

職場においても、特にこのような状況下では、水分・ミネラルの補給や、違和感があったらすぐに医療機関に相談すること(救急車を呼ぶか迷うような場合は、救急安心センター事業(♯7119)の利用も推奨されています)、そして熱中症対策に関する情報共有・教育といった対応が求められます。

今年の2月には、従業員が熱中症とみられる症状で死亡したことについて、会社側の責任を認め、賠償を命じる判決が福岡地裁で出されています。この事件は11年前の事故で、サウジアラビアの現場への派遣時のことだったようですが、会社は従業員に作業をさせるにあたり、「暑さ指数」などのチェックや体調の確認を行う必要があり、これを怠ったことは「安全配慮義務違反」であると判断されたということです。

ここ最近は「災害級」の暑さに加え、地震や台風といった天災にも特に注意が必要とされています。8月8日の日向灘震源の地震を発端に、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表されました。この特別な注意の呼びかけは15日の夕方に終了が発表されましたが、内閣府は日頃からの地震への備えについては引き続きの実施を推奨しています。備えは個々人のみならず、会社にも必要です。

東日本大震災で被災し、津波で従業員が亡くなった「七十七銀行女川支店津波被災事件」においては、流されてしまった避難場所の指定に対し会社の責任が問われました。裁判では会社への賠償責任は否定されています。しかし被災者遺族の方々の悲しみは計り知れませんし、会社の「安全配慮義務」についても裁判官や有識者の判断が分かれ、いまも議論が続けられています。

「安全配慮義務」は、法律関係に伴って発生する、相手の安全に配慮する義務のことです。雇用という法律関係においては、使用者がその義務を負うことが法律上に明記されていて、仕事中の被災においても、その対策や対応が事細かに問われることになり得ます。会社は、正社員やアルバイトのみならず、派遣労働者に対してもその責任を負っており、これに違反すると、会社が損害賠償責任を問われることもありますし、会社の信用に関わることも考えられます。そして何より従業員が安全に働けるような環境は守らなければなりません。

地震に加え、先日は台風7号の接近により、新幹線や飛行機による交通が一時的に麻痺しました。今後も地震や津波の他に、豪雨や台風に伴う土砂災害や洪水などにも注意を払う必要があるでしょう。自分たち自身の安全に加え、会社の経営陣の方々は労働者の安全にも心を配る必要があります。9月1日の防災の日に向けて、私たちもハザードマップや、災害対応の確認、そして社員教育などを今一度行ってまいりましょう。

ハザードマップは、国土交通省がホームページを作っており、住所を入力するとそこの災害リスクが確認できるようになっています。URLは<https://disaportal.gsi.go.jp/>です。

参考:気象庁2024/08/15「2024年7月の天候」<https://www.data.jma.go.jp/cpd/longfcst/monthly/202407/202407m.html>2024/08/19取得。環境省「熱中症予防情報サイト」<https://www.wbgt.env.go.jp/>2024/08/19取得。NHK、2024/02/13「“会社員は業務中に熱中症で死亡” 会社に賠償を命じる判決」<https://www3.nhk.or.jp/lnews/kitakyushu/20240213/5020015069.html>2024/08/19取得。気象庁、2024/08/15「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)に伴う政府としての特別な注意の呼びかけの終了について」<https://www.jma.go.jp/jma/press/2408/15a/202408151800.html>2024/08/19取得。持田大輔、2022/06/20「【弁護士解説】自然災害における企業の安全配慮義務」<https://www.aig.co.jp/kokokarakaeru/management/natural-disaster/safety01>、AIG損保『ここから変える』2024/08/19取得。

秋の最低賃金改定に向けて

中央最低賃金審議会は、地域別最低賃金額改定について、日本全国において50円を目安とすることを決定しました。これを元に引き上げ額が議論されますが、この目安通りに引き上げが行われると、最低賃金が最も高い東京では、時給1163円以上が義務となります。最低賃金の改定は毎年10月1日に行われますので、秋に向けて賃金の見直しの準備が必要になる場合もあります。ご確認ください。

参考:厚生労働省、2024/07/25「令和6年度地域別最低賃金額改定の目安について」<https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_41785.html>2024/08/19取得。

編集後記

パリオリンピックでは日本の選手が大活躍でした。お家芸の柔道や体操、東京から採用されたスケートボードやフェンシングなど幅広くメダルを獲得しています。ゴルフの松山選手の銅メダル獲得は、私もついつい夜更かしして観てしまいました。テレビに映るパリの町並みも美しく、来週からのパラリンピックも楽しみです。

そんな中宮崎県ではマグニチュード7の地震が発生。気象庁では南海トラフ巨大地震に内容をシフトしています。専門家の説明は「よくわからない」「備えよ」、ということを延々と述べるばかりです。

結局、家具の固定、水や食料の備蓄、非常用持ち出し袋の準備、避難経路の確認等常日頃の準備の再確認という事でしょうか。経済もちょっとしたことから市場も乱高下しています。こういう時期だからこそ足許を再度見直し、目の前の仕事を実直にこなすことが求められるようです。